印刷技術のテック解説

学会誌・研究論文・要素技術の動向を編集部が読み、印刷技術のいまを解説するシリーズです。

歪みを意匠に変える — 大型3Dプリントの制約と、廃材を家具に戻す設計

ものづくりの癖への向き合い方は、潰すか隠すか意匠にするかの3通りしかない。大阪・関西万博のトイレ外装に使われた3Dプリントパネルは、熱収縮による歪みと積層テクスチャを設計者との協働で意匠に転じ、廃材はリペレットして家具に戻した。網点の粒状感や再生紙の色ムラを抱える印刷の現場に、そのまま当てはまる判断がある。

流れている材料を、止めずに測る — ハイパースペクトル検査がロールtoロールに入るとき

巻取の仕事には、不良が見つかるのが巻き終わったあとになるという怖さがある。だが既存の画像検査には原理的な限界がある。カメラは1画素あたり3つの数字しか持っておらず、「色は合っているのに中身が違う」を区別できない。塗工中の層を分光撮像で観察した査読前の報告を材料に、色ではなく組成を測るという考え方を整理する。

粒が入ると、なぜ飛ばなくなるのか — 機能性インクのインクジェット吐出という難所

刷り始めは出るのにしばらく走らせるとノズルが詰まる。液滴が狙った位置からずれる。同じデータなのに濃度がばらつく。この3つは別々の不具合として扱われがちだが、原因は同じ場所にある。液体と固体が混ざった流れという見方を導入すると、症状ではなく原因に手を打てるようになる。

紙をほどくと何になるのか — セルロースナノファイバーが変える包装の基材設計

脱プラで紙に替えろと言われても、紙は水も油も酸素も通す。フィルムを貼れば今度は複合材になってリサイクルしにくい。この行き詰まりに対して、材料の側から出ている別解がCNFである。幅20マイクロメートルのパルプ繊維を幅3ナノメートルまでほどくと何が変わるのか。桁の話から包装の判断まで整理する。

色材を使わずに色を出す — 構造色インクジェットは加飾を何に変えるのか

シャボン玉に色は付いていない。それでも虹色に見える。光の波長ほどの厚みの層が干渉を起こして色を作る「構造色」を、インクジェットでその場に作る技術が日本印刷学会誌に報告された。厚みが色を決めるという原理から、なぜ従来の加飾に版が要ったのか、デジタルにすると何が外れるのか、そしてこの研究がまだ答えていないことまでを順に見る。

印刷の研究はいま何を追っているか — インクジェットと色再現、2026年夏の開発動向

展示会で見る新技術は完成した後の姿である。その手前を見るには学会誌と論文を読むしかない。2026年3月以降に出た文献136件から、色を「合わせる」から「予測する」へ動く研究、顔料を使わない構造色インクジェット、ナノ単位の基材設計、組版への生成AI導入までを現場の言葉で報告する。