納品して 2 週間後に電話が入る。ラベルの端が浮いているという。現場に行くと、たしかに四隅が持ち上がっている。同じラベルを、同じ日に、同じ人が貼ったはずの別の容器では何も起きていない。違うのは、貼られた面が平らか、わずかに曲がっているかだけである。

粘着は、印刷業のなかでも扱いが直感に反する領域である。「強い粘着剤にすれば剥がれない」というのは、半分しか正しくない。強くすれば剥がしにくくなるが、貼りにくくもなる。そして、貼りにくいものは、そもそもきちんと付かない。

この記事では、粘着を「くっつく力」としてではなく、濡れと粘弾性という 2 つの現象として説明する。そこから、タック・接着力・保持力が同時には立たない理由、貼る相手の表面が結果を半分決める理由、温度と時間で挙動が変わる理由まで、すべて 1 本の線で導く。最後に、剥がすところまで含めた設計の話をする。

貼ったのに、なぜ端から浮くのか

まず、現場で起きる不具合を並べておく。

症状よく出る場面
端が浮く、四隅が持ち上がる曲面、角、凹凸のある面
低温で剥がれる冷蔵・冷凍の保管、冬季の屋外
時間が経つとずれる重いもの、縦の面、高温
剥がすと下地が傷む塗装面、印刷面、薄い紙
剥がすと糊が残る長期間貼りっぱなし、高温
そもそも付かない粉っぽい面、油の付いた面、特殊な樹脂

これらは、粘着剤の「強さ」という 1 つの軸では説明できない。実際、強い粘着剤にしたことで悪化する症状が、この表のなかにいくつもある。

説明するには、粘着というものが何をしているのかから始める必要がある。

粘着は「液体でありながら固体である」ことで成り立つ

粘着剤は、押し当てるだけでくっつく。溶剤も熱も要らない。これは接着剤とは違う性質で、感圧接着と呼ばれる。

ではなぜ、押すだけでくっつくのか。答えは、粘着剤が液体と固体の中間の性質を持っていることにある。

くっつくためには、液体でなければならない

2 つの物体がくっつくには、分子どうしが十分に近づく必要がある。ところが、固体と固体を押し当てても、実際に触れているのは表面の高いところだけである。どんなに平らに見える面でも、微視的には山と谷がある。

粘着剤は、この谷に流れ込む。押し当てられた圧で、ゆっくりと形を変えて広がっていく。この「流れて広がる」性質は、液体のものである。

保持するためには、固体でなければならない

しかし、完全な液体では困る。垂れてしまうし、力を加えれば簡単にずれる。貼ったあとは、形を保っていなければならない。これは固体の性質である。

粘着剤は、この 2 つを同時に満たすように作られている。ゆっくりした力(押し当てる圧)には液体のように応じ、速い力(剥がそうとする力)には固体のように抵抗する。この性質を粘弾性と呼ぶ。

この 1 点を押さえると、以降の話がすべて導ける。

くっつく前に、まず濡れなければならない

粘着剤が被着体の凹凸に流れ込んで接触面積を稼ぐことと、濡れていない場合の違いを示した図
図1: どんな面も微視的には凹凸がある。そこへ入り込めるかどうかが接着を決める。

粘着剤が相手の表面に広がることを、濡れという。濡れなければ接触面積が稼げず、どんなに「強い」粘着剤でも力を発揮できない。

濡れを妨げるもの

  • 油分 — 手の脂、離型剤、機械油。粘着剤が広がらない
  • 粉・ほこり — 粘着剤が粉に付き、下の面には触れない
  • 水分 — 表面に水があると、粘着剤との間に膜ができる
  • 表面の性質そのもの — 一部の樹脂は、そもそも液体をはじく

最後の項目が、実務ではとくに重要である。材質によって、液体がなじみやすい面と、はじく面がある。水滴が丸くなる面は、粘着剤も広がりにくい。逆に、水滴が平たく広がる面は、粘着剤もよくなじむ。

だから、貼る相手を聞かずに粘着剤は選べない。「屋外用の強い粘着で」と言われても、貼る相手が分からなければ答えられない。

時間をかけて濡れていく

もう 1 つ重要な性質がある。濡れは、貼った瞬間に完了しない。粘着剤は貼られたあとも、ゆっくりと凹凸の谷へ流れ込み続ける。

だから、接着力は時間とともに上がる。貼った直後は簡単に剥がせても、一日置けば剥がしにくくなり、数か月経てばさらに強くなる。

この性質は、両方向に効く。「貼り直せると思っていたのに剥がれない」という苦情も、「貼った直後にずれた」という苦情も、同じ性質から出ている。貼り直しを想定するなら、その旨を伝えたうえで再剥離を前提にした選定をする。

タック・接着力・保持力は、同時には立たない

粘着剤の性能は、一般に 3 つの指標で語られる。そして、この 3 つは互いに引っ張り合う。

タック・接着力・保持力の3つが同時には立たないことを示した図
図2: 柔らかいほどよく濡れ、硬いほどよく保持する。両立しない。
指標何を測っているか強くするには
タック触れた瞬間にくっつく力柔らかくする(よく濡れる)
接着力垂直に引き剥がす力への抵抗濡れと凝集のバランスを取る
保持力ずらす力への抵抗(ずり)硬くする(凝集を上げる)

柔らかくすればよく濡れるので、瞬間的にはくっつく。しかし柔らかいということは、ずれる力にも弱いということである。逆に硬くすれば形を保つが、凹凸に流れ込めない。

「強い粘着剤」という言葉が意味をなさないのは、このためである。何に対して強いのかを言わなければ、選定にならない。

用途から、どの指標を優先するか決める

  • 曲面・粗い面に貼る → タックを優先(濡れやすさ)
  • 重いものに貼る、縦の面に貼る → 保持力を優先
  • 長期に貼りっぱなし → 接着力を優先
  • 短期で剥がす → 接着力を抑え、時間で上がりすぎないものを選ぶ
  • 低温で使う → その温度で硬くなりすぎないものを選ぶ

この整理を持っておくと、発注側との会話が変わる。「強いのをお願いします」に対して、「どこに貼って、いつまで貼りますか」と返せるようになる。

粘着剤の系統によっても性格が違う

もう 1 段だけ踏み込んでおく。粘着剤には、化学的な系統がいくつかあり、系統ごとに得意なことが違う。細かい銘柄を覚える必要はないが、「系統によって性格が違う」ということは知っておきたい。

おおまかに言えば、次のような傾向がある。

  • タックが出やすく、扱いやすい系統 — 幅広い用途に使われる。低温や長期の耐久には限界がある
  • 耐候性・耐熱性に優れる系統 — 屋外や高温に強い。そのかわりタックが控えめで、貼りにくいことがある
  • 柔らかく、よく追随する系統 — 曲面や凹凸に強い。ただし保持力では不利になる

ここでも、すべてに優れた系統は存在しない。用途から要求を絞り、それに合う系統を選ぶ、という順序になる。

実務としては、「この用途に、この系統」という組み合わせを、自社で使った実績とともに記録しておくのが効く。次に似た相談が来たときに、実績で答えられる。カタログの数値より、自社で確かめた結果のほうが強い。

厚みも効く

粘着剤の層の厚みも、結果を左右する。厚いほど凹凸に入り込みやすく、追随性が上がる。粗い面や、曲がる面に貼るなら、厚みのある層が有利になる。

ただし、厚ければ横方向にずれやすくもなる。そして、厚い分だけ材料費も上がる。ここにも交換関係がある。平らで滑らかな面に貼るだけなら、薄い層で十分である。

貼る相手が、半分を決めている

粘着剤の議論は、ラベルの側だけで完結しない。貼られる側(被着体)の性質が、結果の半分を決めている。

表面の性質

先に見たとおり、材質によって液体がなじむかどうかが違う。ガラスや金属のようになじみやすい面もあれば、一部の樹脂のようにはじく面もある。後者に貼るには、専用の設計が要る。

紙や段ボールに貼る場合は、また別の問題が出る。表面の繊維がもろければ、粘着剤より先に紙のほうが壊れる。剥がすと紙の表面が持っていかれるのは、粘着が強すぎるのではなく、下地が弱いということである。

冒頭の例に戻る。平らな面と、わずかに曲がった面。ここで何が違うのか。

曲面に平らなラベルを貼ると、ラベル自身が元に戻ろうとする力が働き続ける。粘着剤は、この力に永久に抵抗しなければならない。とくに端と角は、力が集中する。だから、浮くとしたら必ず端からになる。

対策は 2 方向ある。

  • ラベルを追随しやすくする — 薄く、柔らかい基材にする。腰の強い紙は曲面に向かない
  • 形を工夫する — 角を丸める。角が尖っているほど、そこから浮きやすい

2 つめは費用がかからず、効果が確実である。角丸にするだけで、端からの浮きはかなり減る。デザインの都合で角を尖らせる必要がないなら、丸めておきたい。

凹凸と、汚れ

粗い面、成形の跡がある面、印刷の凹凸がある面。粘着剤が谷まで届かなければ、実質的な接着面積は見た目より小さい。この場合、柔らかくてよく濡れる粘着剤か、厚みのある粘着層が有利になる。

そして、意外なほど効くのが貼る前の清掃である。埃、粉、油。工場のラインで貼る場合、被着体の表面がどういう状態で来るのかを確認しておきたい。不具合の原因が、粘着剤ではなく工程にあることは珍しくない。

被着体が「動く」場合

もう 1 つ、見落とされやすい要素がある。貼られる相手そのものが変形する場合である。

柔らかい容器は、握れば凹み、離せば戻る。中身を入れれば膨らむ。ラベルは、この変形に付き合わされる。硬い基材のラベルを柔らかい容器に貼れば、変形のたびに端に力がかかり、やがて浮く。

温度で変形するものもある。加熱される容器、冷却される容器。膨張と収縮の度合いがラベルと違えば、そこにずれの力が生まれ続ける。

したがって、確認すべきは「何に貼るか」だけではない。「その相手は、貼ったあとに何をされるか」まで含めて聞く。握られるのか、加熱されるのか、水に浸かるのか、積み重ねられるのか。

洗われる、こすられる

繰り返し使われる容器では、洗浄が入る。ここでラベルに求められるのは、剥がれないことか、あるいはきれいに剥がれることか。用途によって正反対になる。

回収して再充填する容器なら、洗浄で剥がれてくれたほうがよい。逆に、使用中に洗われる製品なら、洗っても剥がれないことが求められる。同じ「洗浄」という条件でも、要求は逆になる。ここを確認せずに選ぶと、確実に外す。

温度と時間で、挙動が変わる

粘着剤は、粘弾性という性質を持っている。そして粘弾性は、温度と時間の影響を大きく受ける。

低温では硬くなる

温度が下がると、粘着剤は硬くなる。硬くなれば濡れにくくなり、タックが落ちる。冷蔵・冷凍の環境で「貼ったのに付かない」という不具合は、ここから来ている。

重要なのは、貼るときの温度と、貼ったあとの温度を分けて考えることである。常温で貼ってから冷蔵庫に入れるのか、冷えた状態で貼るのか。後者ははるかに難しく、専用の設計が要る。

逆に高温では柔らかくなり、保持力が落ちる。夏場の車内や、屋外の直射日光下では、ずれや糊のはみ出しが起きやすい。

時間では強くなる

先にも触れたが、接着力は時間とともに上がる。数時間、数日、数か月というスケールで、じわじわと強くなっていく。

この性質は、剥がすことを前提にした用途では逆に働く。「一時的に貼るだけ」のつもりでも、数か月放置されれば剥がれなくなる。値札、告知、養生。剥がす時期が決まっているなら、それを前提に選定する。

試験は条件込みで読む

粘着剤の性能は、決められた条件のもとで測られている。被着体の材質、貼ってからの時間、温度、剥がす速度と角度。条件が変われば値も変わる。

これは、色や排出量の数字と同じ構造である。数値そのものより、どの条件で測られたかのほうが情報量が多い。他社の数値と比べるときは、条件が揃っているかを先に確かめたい。

封蝋から感圧ラベルへ

ここで、この技術がどこから来たのかを見ておきたい。

もともと、貼るには手間がかかった

紙を貼り付けるという行為は古くからあるが、長いあいだその場で糊を用意する必要があった。糊を塗り、貼り、乾かす。あるいは蝋を溶かして押す。どれも準備と時間を要する。

切手のように、あらかじめ糊を塗っておく方式が現れたのは大きな進歩だった。ただしこれは水で湿らせる必要があり、「押すだけで貼れる」ものではない。

剥離紙という発明

感圧接着のラベルが実用になるには、もう 1 つの発明が要った。粘着剤を、使うまで保護しておく仕組みである。

粘着剤は、常にくっつく状態にある。そのままでは扱えない。そこで、粘着剤が付きにくい処理をした紙(剥離紙)を裏に貼っておく。使うときにこれを剥がす。

この 3 層(表面基材・粘着剤・剥離紙)という構成が確立したことで、ラベルはあらかじめ印刷して、在庫して、必要なときに貼るものになった。印刷業から見れば、これは決定的な変化だった。

いま、その構成が問い直されている

もっとも、この便利な構成には副産物がある。剥離紙は、貼った瞬間に廃棄物になる。ラベルと同じ面積の紙が、使われずに捨てられている。

剥離紙を使わない方式や、剥離紙を回収して再利用する取り組みも出てきている。環境への要請が、150 年前に確立した構成を問い直しているというのは、興味深い状況である。この観点は 印刷会社の環境対応をどう進めるか でも扱っている。

ラベルの構成と、印刷する側の制約

ラベルの層構成(表面加工・印刷層・表面基材・粘着剤・剥離紙)と、それぞれの役割を示した断面図
図3: 不具合が出たとき、どの層の問題かを切り分ける。原因の層が違えば、対策も違う。

基材で決まること

表面基材は、印刷の面であると同時に、形に追随する部品でもある。ここに紙を使うか、フィルムを使うかで性格が変わる。

紙の基材フィルムの基材
水・油弱い(加工で補える)強い
曲面への追随限られるよく追随する
質感紙らしい風合いが出せるつるりとした印象
費用一般に安い一般に高い
再資源化比較的扱いやすい分別が必要になる

印刷の側で気をつけること

  • 抜きの位置と、印刷の見当 — ラベルは形に抜くので、絵柄との位置関係にずれが出る。端ぎりぎりに文字を置かない
  • 角を丸める — 前述のとおり、浮きの防止に効く
  • 表面加工の要否 — 水や薬品に触れるなら要る。ただし、加工した面には後から書き込めない
  • 糊が回る — ロール状で保管すると、切り口から粘着剤がにじみ出ることがある

貼る工程まで含めて考える

ラベルは、刷って終わりではない。貼られて初めて役に立つ。そして、貼る工程の条件が仕上がりを左右する。

  • 手で貼るのか、機械で貼るのか — 機械なら、剥離紙からの剥がれやすさが効く
  • ロールか、シートか — 機械貼りではロール、手貼りではシートが扱いやすいことが多い
  • 貼る場所の環境 — 温度、湿度、被着体の状態
  • 貼ってからの扱い — すぐ冷やすのか、積み重ねるのか、輸送するのか

この 4 点を聞いておくと、選定の精度がまるで違う。「どんなラベルが要りますか」ではなく「どう貼って、どう使いますか」と聞く。

ラベルは、印刷の側から見ても特殊である

粘着の話から少し離れて、印刷の工程としてのラベルにも触れておきたい。ラベル・シールの印刷は、一般の商業印刷とかなり性格が違う。この違いを知らないまま受注すると、社内で回らないことがある。

巻いたまま、通しで加工する

まず、扱う形が違う。一般の商業印刷は、決まった寸法に断った紙を 1 枚ずつ機械に通す。ラベルは、ロール状の材料を連続的に流しながら、印刷・型抜き・カス取り・巻き取りまでを一気に行う。

この方式には、はっきりした利点がある。

  • 工程が一続きになる — 刷ってから加工場へ運ぶ、という往復が発生しない
  • 抜きの精度が出しやすい — 同じ機械の中で位置を合わせ続けられる
  • そのまま貼付機に掛けられる — ロールのまま納品でき、発注側の工程に直結する

一方で、制約も生まれる。ロールの幅と、抜き型の周長で、作れる寸法が決まってしまう。「あと 5mm 大きく」という要望が、型の作り直しになることがある。この点は、設計の初期に確認しておきたい。

色数と絵柄の考え方が違う

ラベルの印刷では、特色を多用することが少なくない。面積が小さく、ブランドの色が厳密に決まっていることが多いからである。掛け合わせで近似するより、特色で作るほうが確実で、結果として安いことがある。

また、白のインキを使う場面が多い。透明なフィルムに刷る場合、下地が透けるので、絵柄の下に白を刷って隠す必要がある。一般の紙の印刷では出てこない工程である。

色の合わせ方そのものは オフセット印刷の色はなぜ合わないのか と同じ原理で考えられるが、基材が紙かフィルムかで、色の出方はかなり変わる。フィルムはインキを吸わないので、乾き方も発色も紙とは別物になる。

小ロットと可変が求められる

ラベルは、品目ごと、産地ごと、賞味期限ごとに内容が変わる。結果として、1 種類あたりの部数が小さく、種類が多い。この構造は、版を作る方式には不利である。

だからこの分野では、デジタル印刷の適用が早くから進んできた。版が要らず、1 枚ずつ内容を変えられるという性質が、そのまま需要と噛み合っている。方式の選び方については オフセット印刷とデジタル印刷の分岐点 の考え方がそのまま使える。

受注の前に確認しておくこと

ラベルの仕事を初めて受けるなら、次の点は先に確かめておきたい。自社で刷るにせよ、外注するにせよ、聞かれる項目である。

確認することなぜ効くか
ロールかシートか貼る工程が機械か手かで決まる。後から変えにくい
巻きの方向貼付機に掛けるとき、絵柄の向きと巻き出しの向きが決まっている
1 巻あたりの枚数相手のラインの都合で決まっている。勝手に決められない
抜きの形と、既存の型の有無型代が出るかどうか。既存の型に寄せられれば安くなる
基材と粘着剤の指定すでに決まっていることが多い。既存品があれば現物をもらう

とくに巻きの方向と 1 巻あたりの枚数は、発注側の設備に依存する項目で、印刷会社の側では決められない。聞かずに進めると、刷り上がってから巻き直しになる。

剥がすことまで設計する

最後に、限界と、その先の設計について書いておきたい。

「よく付いて、よく剥がれる」は原理的に難しい

ここまで見てきたとおり、接着力は時間とともに上がる。強く付いて、あとできれいに剥がれるものを作るのは、原理的に難しい。

再剥離を前提とした粘着剤は存在するが、それは接着力を意図的に抑えているということでもある。抑えれば、その分だけ剥がれやすくもなる。ここにも交換関係がある。

したがって、「いつ剥がすか」を先に決めることが設計の出発点になる。

剥がす時期選定の方向
剥がさない(製品と一生)接着力と耐久性を優先。強くてよい
数週間〜数か月で剥がす再剥離を前提に。時間で強くなりすぎないもの
その場で貼り直すことがあるタックを抑え、位置を直せるもの
剥がした跡を残したくない糊残りしにくいもの。被着体との相性を必ず確認
剥がしたことが分かってほしいあえて破れる構造にする(封緘・改ざん防止)

最後の項目は、剥がれやすさを機能として使っている例である。剥がすと基材が破れ、貼り直せない。開封の痕跡を残すという目的から逆算した設計になっている。

やってみないと分からない部分は残る

粘着剤の選定は、条件が多く、相互に影響し合う。被着体・温度・時間・形・貼り方。すべてを机上で詰めきることはできない。

だから、実際の被着体で、実際の環境で試すのが最も確実である。サンプルを貼って、数日置いて、剥がしてみる。この手順を省くと、納品後に冒頭のような電話が来る。

法令に関わる表示は、専門家に確認する

なお、食品・医薬品・化学品などのラベルには、表示すべき事項が法令で定まっているものがある。この記事で扱ったのは粘着と物理の話であって、表示内容の適否ではない。記載事項については、必ず所轄の窓口や専門家に確認してほしい。

まとめ — 相談を受けたときに聞く 5 つのこと

粘着は「強さ」の一軸では語れない。濡れと粘弾性という 2 つの現象から、すべての性質が導かれている。この理解があれば、聞くべきことが決まる。

  • 何に貼るか。材質と表面の状態で、選定の半分が決まる
  • どんな形の面か。曲面・角・凹凸があれば、追随性を優先する
  • どんな環境に置かれるか。低温では硬くなり、高温では柔らかくなる
  • いつまで貼るか。剥がすのか。接着力は時間とともに上がる
  • どう貼るか。手か機械か、その場の温度、貼った直後の扱い

そして、角を丸めることと、実物で試すこと。この 2 つは費用がほとんどかからず、不具合を最も確実に減らす。

パッケージ・紙器の記事は パッケージ・紙器 にまとめている。紙の構造そのものは 段ボールと紙器はなぜ強いのか、表面の加工については 後加工はなぜ最後に効いてくるのか も参照してほしい。